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著者:新井直之
出版:TOブックス
評価:★★★★(5つ星が最高)

NHKの「特報首都圏」で放送された内容を取材過程などをまとめて単行本化されたもの。大人の貧困に比べると、その実態が見えにくい子どもの貧困。その実態とその対策の一部を垣間みることができる。

マクロ的な部分が本書では不足している気がするが、その分、個人の生々しい問題が浮き彫りにされている。この「子どもの貧困」という問題を考えるきっかけには、とてもよい本だと感じた。

 

「チャイルド・プア」で気になったポイント

まず、子どもの貧困というと途上国などの問題だと考えがちだが、そうではないことを認識しなければならない。

日本の子どもの貧困率は15.7%。なんと、子どもの約6人に1人が貧困状態にあるという。経済的な理由で就学援助を受ける小中学生の数も156万人に上る。

6人にひとりということは、1クラス35人だとすると平均5人から6人のクラスメートが経済的に厳しい状況に立たされていることになる。


そして、子どもの相対貧困率は、先進20カ国のなかで4番目に高くなっている。(アメリカ、スペイン、イタリア、日本の順)


そして、その子どもの相対貧困率は1990年代前半、2000年代半ばからの上昇率が高くなっており、今後も高くなっていくことが推察される。


少子高齢化という話はよく話題に上り問題視される。しかし、それとともに(いやそれ以上に)問題なのは、実はその少子の部分に該当する子どもたちのなかには、経済的な理由や家庭環境により、社会にでていくために必要な教育を受けることができないでいる人間が少なからずいるということになのだ。


本書の副題に「社会を蝕む子どもの貧困」というタイトルがついているが、この問題を放置しておけば、間違いなく社会は蝕まれていき、国家も社会も脆弱化していくだろう。


本書に登場するNPO代表の青砥さんはこう語っている。

「少子高齢化の社会でこれから我々の社会を支えてくれるのは、未来ある子どもたちです。にもかかわらず、日本社会は彼らを見捨ててしまっている。なんてバカなことをしているんだっていう危機感なんですね。」

こういった危機感を大人たちが持っているかと言われれば、おそらく答えは否だろう。
しかし、おそらく残された時間は、もうほとんどないと感じた。

「チャイルド・プア」のみんなの評価

28

Amazonでは、まだ1件しかレビューされていません。売上のランキングは高いので、これからレビューが集まってくると思います。

54

ブクログの方もレビューはこれからのようです。今のところ4つ星以上の評価しかありませんね。

「チャイルド・プア」のまとめ

社会に問題を知らしめるということでこの本(そして元になったテレビ番組)を作った功績は大きいと思う。まずは、問題の存在を知らなければ、改善策など考えることはできないのだから…。


本書は、著者が取材の過程で出会った人の話で構成されている。リアルな一人の人間としての苦悩などが伝わりやすい反面、よりマクロな部分が見えにくくなっているという印象をうけた。


本書で「子どもの貧困」という問題を知り、今後、より深く学びたい人には類書を合わせて読むことをおすすめする。そして、どんな小さなことであろうと実際のアクションにつなげてもらいたいと思うし、僕自身も自分にできることをしていきたい。


「子は宝」という言葉があるが、現在の日本では子は見捨てられ、社会とのつながりが断たれ孤立している。そんな社会が幸せな社会であるはずはない。幸せな社会を目指すのであれば、幸せな子どもたちを増やさなくてはならない。


待ったなしの状況だが、本書でも紹介されているようなNPOの活動やスクールソーシャルワーカーの活動が、希望ある明日につながることを期待せずにはいられない。