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著者:佐高信、佐藤優
出版:集英社新書
評価:★★★★(5つ星が最高)

ここのところ佐藤優氏の本をよく読んでいる気がする。本書も佐藤氏と佐高氏の共著となっている。教養の中でも、思想や哲学を主に扱っている。このような本は、今までは一般にはそれほど見向きもされなかったと思われるが、佐藤氏の影響力なのだろうか、ここのところ書店でもよく見かける。

お手軽で即効性を求める新自由主義的な本が、どんどん幅を効かせてきている中、こういった骨太な思想を鍛えるための本が頑張っているのは心強い。最近、こういった本を読んで行く中で、自分が何も知らない、わかっていないということに愕然とする。





章立ては以下の通り

第1章 宗教・民族と国家
第2章 家族と国家
第3章 戦争・組織
第4章 日本とアメリカ
第5章 沖縄・差別の構造
第6章 日本・日本人
第7章 文学・評伝・文芸批評
第8章 社畜とブラック企業
第9章 未来を読む

第1章は、宗教の話を中心に進められていきます。導入の部分で元AKBの前田敦子さんの話を持ってくるあたりが面白いですね。身近な話から入って読者を引きつける。歴史的な出来事をその背景にある宗教的なバックグラウンドとともに論じています。

第2章は、家族と国家の関係について。ここでも導入部分で新渡戸稲造の「武士道」を切り捨てたりしていて面白いです。ボリュームはかなり少なめですが、仕事の形態と家族間の関係についての論考には考えさせられるものがありました。

第3章は、戦争についての論考です。「戦争はつまりは経済だ」という話や「海軍の良識の嘘」といった話が興味深かったです。日本にいると戦争について考える機会というのはあまりないように思いますが、教養分野において非常に重要な位置を占めるべきものだと思います。

第4章は、日本とアメリカの関係についてです。よく名著だと言われる「菊と刀」をだめだと言ってみたり、最近話題になった孫崎享の「戦後史の正体」についてその問題点について書かれています。

第5章は、沖縄の話です。本書の中で、一番読みが多恵があった部分です。大国化する中国との関係上からも、沖縄という場所については国民みんながもっと真剣に考えるべきだと思います。沖縄にいくたびに沖縄の人たちが抱く本土の人間に対する嫌悪というものを感じることがあります。これは本当に由々しき問題だと思います。

第6章は、日本人の思想がどのように形作られていったかという話です。丸山真男の話が多くを占めます。哲学や思想というと、僕たちの生きる世界とは遠くかけ離れたものだと考えてしまいますが、そういったものこそが、僕たちの生きる世界を形成する源になっていることがよくわかります。

第7章は、文芸やその批評についてです。あまり感じるところはありませんでした。

第8章は、本書のもう一つの目玉だと思います。現在、大きな問題になっている社畜やブラック企業についての考察です。ここらへんは、本当によく考えるべきですね。本章の最初の見出しが「収奪マシーンと化した会社」というものですが、これがすべての問題の原因のように思います。

第9章は未来を読むという見出しになっています。未来を読むために過去を知る姿勢が必要なことがわかります。本章のブックリストにはヒトラーに関する著書や田中角栄に関する著書などがあげられています。

「世界と闘う『読書術』思想を鍛える1000冊」のまとめ


タイトルに1000冊という文字があるが、本文の中に登場するのは、そのうちのごくわずかです。残りの大部分は、巻末に並んでいるだけです。そこには注意が必要です。

全体のテイストとしては、立花隆氏と佐藤優氏の共著「ぼくらの頭脳の鍛え方」と本当によく似ています。そちらの本は、教養書全体を扱っていますが、本書は思想に関することがメインになっています。好みはあるとは思いますが、僕は 「ぼくらの頭脳の鍛え方」の方が好きですね。