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著者:塩野七生
出版:新潮文庫
装丁:松田行正
評価:★★★★(5つ星が最高)

一人の破壊的創造者の烈しい人生と一族の栄枯盛衰を描いた壮大な物語。舞台は中世のイタリア、父はローマ法王アレッサンドロ六世、本人チェーザレも一時は枢機卿にまでなったエリート中のエリート。しかし、宗教世界での安定した生活を捨て、彼は俗人世界での権力者を目指す。政略結婚は当たり前、毒殺などの陰謀渦巻く世界でのチェーザレの活躍、そして最期を描く。




そして、この物語の中には、歴史にそれほど興味のない人にとっても聞いたことのある人物が二人登場する。「君主論」で知られるニッコロ・マキアヴェッリと万能の天才レオナルド・ダヴィンチである。このように歴史になお残す人物たちが、同じ時代に同じ場所にいたということも非常に興味深い。


当ブログでも紹介した同じく塩野七生さんの「皇帝フリードリッヒ二世の生涯」で描かれていたのが、1200年代であり、本作で描かれているのは、そこから、200年ほど時代を経た中世のイタリアである。


しかし、時は流れ物語の主人公は変わっても、そこで行われていることは概ね同じようである。国と国との争い、法王をめぐる権力闘争、民衆に支持される君主がいれば、見放される君主もいるという構造は、フリードリッヒ二世の時代と何も変わっていないように思える。


しかし、フリードリッヒ二世と本作の主人公チェーザレ・ボルジアを比べると大きく異なるところがある。フリードリッヒ二世が、法治国家を目指し、政教分離という当時としては革新的なことを成し遂げようとしたのに対し、チェーザレは権力そのものを欲していたように感じることである。


チェーザレについては、漫画でも描かれているので(チェーザレ 破壊の創造者)、そちらを読んで興味を持った人にも是非、本作でより深くチェーザレ・ボルジアの人生に触れてもらいたい。

「チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷」のまとめ

ライフネット生命保険の出口会長が著書の中で推薦していたこともあり、とても楽しみにしていました。また、塩野作品については、HONZの成毛真さんもおすすめしていたと思います。本作はもちろん本文も良かったのですが、解説の沢木耕太郎の文が良かったですね。その解説の中に次のような一文があります。


「恐らく、塩野七生には、このような言説に幽閉され、痩せ細ってしまったチェーザレに、どうにかして手を差し伸べたいという願望があったのだ 。なぜチェーザレだったのか。その問いに対するひとつの答えは、歴史の闇の奥に追い立てられ、不当な扱いを受けているチェーザレを、自らの手で救出するのだという物書きとしての野心のうちに求められるかもしれない。」


塩野作品には、主人公に対する愛を感じことが多いのですが、それは、おそらく塩野さんのこういったところによるものだと思います。物語としても面白いですし、歴史やヨーロッパ文化の源流を知るうえでもとてもよい作品でした。


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