作者:池上 彰,佐藤 優
出版社:東洋経済新報社
発売日: 2016-12-16


もうすぐ4月だ。4月といえば新しい生活が始まる季節。特に新大学生、新社会人は気持ちを新たにして、やる気が満ちあふれていることだろう。そんな高揚した気持ちをよい方向に活かしてほしいと思いこの本を紹介する。


本書は、池上彰と佐藤優という二人の知の巨人が普段どのように情報に接し、どのように知識を吸収しているのかを解説したものだ。具体的には、新聞、雑誌、ネット、書籍と教科書についてどのようなものをどのように読んでいるかについての対談である。


この二人の手法には共通点もあれば、ちがっているところもある。たとえば、相違点についていえば佐藤氏はタブレットやEvernoteといった文明の利器を活用しているが、池上氏は概ね紙の媒体が中心となっている。


しかし、方法や読んでいる媒体にちがいがあっても基本的な部分については重なる部分が大きい。その中でも、以下のようなことが本書の重要な部分であるといえよう。


  • 世の中を「知る」には新聞、世の中を「理解する」には書籍がベースになる
  • 書籍の中でも、基礎知識を強化するなら「教科書・学習参考書」を上手に使うこと
  • 新聞は少なくとも2紙以上読まなければ危険
  • ネットは非常に効率の悪いメディア

どうしても若い世代になればなるほどネットでの情報収集が多くなりがちだけど、この二人によれば、ネット情報の取捨選択は上級者向けということになる。それは紙の媒体が、様々なチェックの過程を経て出版されていることやネットでは自分が好む情報ばかり集まってくる構造になっていることなどが大きな原因だといえる。


それに比べると新聞や雑誌という媒体は、自分が意図していなかった情報も目に飛び込んでくるという部分があるからこそ有益なのだといえるかもしれない。


また、新聞は2紙以上読むという点も大切なポイントだろう。いつも同じ新聞のみ読んでいると気づかないかもしれないが、新聞によって同じ出来事についての扱いが異なることもある。たとえば、ある出来事についてA紙は好意的に書き、B紙は批判的に書き、C紙ではそもそもその出来事に触れていないということが起こりうるということだ。もし、このとき一紙しか読んでいなければ、それがその人の現実になってしまう。たとえばC紙読者ならその出来事を知ることさえできない。


本書では普段購読する新聞(ホーム)とそうでない新聞(アウェー)をつくることを推奨している。アウェーの新聞は通勤・通学の途中などに買うもよし、図書館などで読むのもよいだろう。そうすることで情報の偏りが少なくなる。もちろんこれは新聞のみにあてはまる原則ではなく、情報全般に接するときの大切ポイントである。


情報を理解するあるいは虚偽の情報に騙されないためには基礎的な知識を身につける必要があることも本書では強調されている。それに最適なのは意外にも学校の教科書や参考書なのだそうだ。


本書ではこういった様々な方法や原則が紹介されている。私もこの二人の方法を参考にしつつも自分なりの知性獲得の方法を身につけていこうと思う。 
 

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